人生は虹色

「まぁ、無理には俺たちも言わないからさ。気が向いたら遊びに来なよ」



3人のうち、

今まで様子を伺っていた一人、

小田海斗《おだ かいと》が初めて口を開いた。



僕は「気が向いたら行くよ」とだけ告げ、

その場から逃げようとしていた。



ぶっちゃけ行く気なんてなかったし、

その場凌ぎで、

この場から抜け出したかっただけだ。



たけど、

海斗はそんな僕のことを見透かしたように、こう言った。



「仁!待ってるからなぁ!」



海斗の呼びかけにしつこいなぁとかは思わず、むしろ井田と神平と違って、あだ名で呼ばないタイプなんだと、変なところを気にしてしまっていた。



僕は片手で愛想するだけで、

それ以上のことは言わなかった。



そもそも何で部活をしないのか?



時々、自分に問いかけることがある。



海斗たちに誘われて正直、

めちゃくちゃ嬉しかった。



心の底で眠っていた気持ちが目覚めるよう、沸々と自分に問いかけた。



何でバスケをしないのかと、

何度も何度も問いかけた。



中学の頃、

顧問の先生が怖かったから?



部活をやらされている感があって、

楽しくなかったから?



自問自答に導き出される答えとは別に、バスケが純粋に好きだという強い意志が込み上がげてくる。



僕は臆病で逃げ続けていただけなんだ。



改めて気づかせてもらった気がする。



気持ちが挫けて、自ずとバスケは嫌いだと思い込ませていたんだと思う。



そんな僕をせっかく誘ってくれたのに、

変われるきっかけを作ってくれたのに、

僕はまた逃げてしまった。



悔やむ気持ちが残ったまま、

体育の時間は終わった。
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