【シナリオ】華のJK、花屋のお兄さんにさらわれました!
episode.3
〇花屋・お昼時のいい天気な日

慎「日向ー、そこの水換えといて」
日向「はいっ!」

慎「日向、倉庫にあるリボン全部持ってきてくれ」
日向「はっ、はあい!」

慎「日向ぁ、外にこれ置いてきてほしい」
日向「ふぁい…!」

慎「日向、その………、?」

彼女の元気な足音が聞こえず振り向いてみると、息を切らした彼女が花を抱えて立っていた。
慎は申し訳なさそうに眉を寄せて言う。

慎「ちょっと休憩すっか」



〇花屋のカウンターの奥・作業場

ペットボトルの水をぷは、と飲みながら、作業を続ける慎を見る日向。

日向「慎さん、今までこれ一人でやってたの?」
慎「いや、ちょくちょくバイトはいたけど、やめさせた」
日向「え、なんで?」
慎「花を好きじゃなかったから」

どこか濁された回答に、日向はふぅんと返す。
日向(きっと、このイケメン近づきたさにやらかした女子がいたんだろうなぁ)※正解※

慎「その分おまえは好きだろ、花」
日向「まぁ慎さんにはおよばないけどね!」

ふふ、と少し嬉しそうに日向が笑った。
そんな彼女を見て、先ほど花に水をあげていた時の日向の笑顔を思い浮かべる慎。

慎「午後も頑張ったら、今日は夕飯食いに行くか」
日向「ほんと!?」
慎「ご褒美だからな。頑張らないとやんねーよ」
日向「わかってるって!」

そうとなればと素早く立ち上がった日向。
もうぶつぶつと夕飯は何がいいか考えていて、お店のほうから「慎さーん!私お寿司が食べたい!」という声が届く。
慎はそんな彼女に微笑みをもらして、「はいはい」と言った。



〇花屋・夕方に差し掛かる頃

下校してくる小学生やお買い物に行く奥さんたちを横目に仕事をしていると、店内におばあちゃんの影が見えた。
きょろきょろと辺りを見回しているおばあちゃんに、日向が声を掛ける。

日向「いらっしゃいませ!何かお探しですか?」
おばあちゃん「ええ、そうなの。お花を贈りたくて」

優しくふんわりとした雰囲気のおばあちゃん。

慎「よかったらこちらにどうぞ」

さりげなく慎が椅子を持ってきて、おばあちゃんを座らせた。
それで、と慎が会話を切り出す。

慎「どんな花を使ってほしいとか、ご要望があればぜひ」
おばあちゃん「そうねぇ、お祝いのお花なんだけど…」

孫娘が誕生日でね、そうそう、ちょうどあなたくらい。と言われた日向。

おばあちゃん「それでもしよかったら、あなたに作ってもらいたくて」
日向「え、私ですか?」

でも私、と言いかけた日向を慎がさえぎる。

慎「お任せください」
おばあちゃん「本当?あなたならきっと、素敵なお花を作ってくれるわ」
見る目はあるからね、と言ったおばあちゃん。

日向が困った表情を浮かべる中、慎はおばあちゃんと受け取りの日や値段について話し合っている。

その後慎と日向が並んでおばあちゃんを見送る。
日向は、何を考えてるんだろうといった顔でそんな慎の横顔を見ていた。



〇回転寿司屋・向かい合って座る

日向「なんでOKしちゃったの慎さん」

ほっぺを膨らます日向。
慎は(怒ってるからかいっぱい食べてるからかわかんねぇな)と心の中で思う。

慎「そりゃ、できると思ってるからだろ」
日向「根拠は?」
慎「俺が教えるから」
日向「ぐぬぅ…」

まったくその通りなのでうなる日向。
慎は、あと、と口を開く。

慎「最近のJKが好きな花とかわかんねぇしな」
日向「それ自分で言ってて悲しくないの」

日向(そんなに歳離れてないでしょ)

二人の間に微妙な空気が流れる。



〇深夜・家

片付いてすっきりしたソファで寝ていた慎が深夜に目を覚ますと、日向が寝ているはずの部屋の電気がまだついていた。
近づいて中をのぞくと、ベッドに本や書類を散乱させたまま日向が寝ている。


〈回想〉家

慎「これ、うちにある花の種類がのった紙な。部屋にある本も見ていいから」
日向「あ、ありがとう…」
慎「ま、あんま気負うなよ。なんかあったら手伝ってやるから」

顔を覗き込んでそう言う慎に、日向は神妙な面持ちでうなずいた。

〈回想終了〉


その光景を見た慎はふ、と微笑み、布団をかけてやる。
そのままベッドに手をつき、スプリンクがギシッと鳴った。
日向の耳元に唇を寄せ、「頑張れよ」とつぶやいて部屋を出ていった。

日向「〜〜〜!!?」

それを聞いてしまった日向は顔を真っ赤にさせ、恥ずかしさに布団にもぐりこんだ。



〇花屋・夕方に差し掛かる頃

日向「あ、いらっしゃいませ!」
おばあちゃん「こんにちは。お花はできてるかしら?」
日向「はい!今持ってきますね」

カウンターに出したのは、赤やピンクで埋め尽くされたガラスドームだった。
おばあちゃんが素敵、と声に出す。

日向「これ、プリザーブドフラワーっていう枯れないお花なんです」
私も最近知ったんですけど、と頬をかく。

日向「お花って見てると楽しいから、お孫さんの誕生日も長く楽しくお祝いできたらなぁって」

どうでしょうか、とうかがうような表情になる日向。
慎は、その後ろで彼女を見守っている。

おばあちゃん「ありがとう。最高の誕生日プレゼントになるわね」

その言葉に満面の笑みになり、ぱっと慎のほうを向いた。
慎も満足げに微笑んでいる。

お会計などを済ませ、3人は店の外に立った。

おばあちゃん「お名前を聞いてもいいかしら」
日向「空澄日向です!」
おばあちゃん「日向さん、あなたに頼んでよかったわ」
言ったでしょう?私、見る目はあるのよ、とおばあちゃんが言い、ふふ、と上品に笑った。

去り際にそう言われ、日向はありがとうございました!と元気に頭を下げた。
横から慎に、よかったなと言われる。

慎「でも、最初っから難しいとこいくとは思わなかったわ」
日向「え、えへへ…」

教えてくれる慎さん、スパルタだったなぁとにがい思いをする日向。

慎「そういえば、なんで赤の花でまとめたんだ?」
日向「あぁ、それは……。赤って、恋の色でしょ?きっと、高校生だしそんな色が似合う気がしたんだ」

へぇ、そんなもんか。そんなもんなの~!と店内に入っていく2人。

慎「じゃあおまえは?」
日向「ん?」

慎が、日向の茶色がかった髪をふわりと一束持っていじる。
身長が高いせいか少し伏し目がちになった彼にドキリとした日向。

慎「日向には、赤の花似合うのか?」
日向「っ……、ひ、ひみつ!!」

そのまま店の奥に入っていってしまった日向。
そんな彼女を、慎は面白そうにくすりと笑った。

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