愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

16.君の時間を貰えないだろうか?

 使用人の方がいらっしゃるようになって、かれこれ一ヶ月が経ちました。

 最初は旦那様から『雇うのはほんの数人だけ』って話を聞いていたのですが、みるみるうちに人数が増えていきまして、今ではお屋敷の大きさの割にたくさんの人たちに囲まれて生活しています。


「クラルテ様、今日はどんな髪型がよろしいですか?」

「もちろん、旦那様を悩殺できるような可愛い髪型でお願いします!」


 わたくしこんな性格をしていますが、一応は侯爵家の娘なので、人に囲まれ世話をされることには慣れています。お願いできることはとことんお願いしますし、自分を押し殺して窮屈になるなんてこともありません。

 とはいえ、旦那様はそういう貴族らしい生活を嫌がると思っていました。

 魔術師団に入ってからは気ままな寮生活を送っていたと聞きますし、人を雇うのにはお金もかかります。ご実家の伯爵家は裕福ではありますが、必要のないお金は使わない主義だと思っていました。自分でできることは自分でする……なんて主張をなさると思っていたのですが。


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