愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「今日は旦那様とのデートですからね! いつもよりも気合を入れておめかしをしました! 可愛いって言っていただけて嬉しいです」


 クラルテはそう言って、目の前でターンをして見せる。

 彼女が選んだのは鮮やかな青色のドレスだった。そういえば以前、好きな色は『青』だと話していたことを思い出す。俺の瞳の色だから、と。


「うん……よく似合っているよ」


 まるで全身で『俺が好きだ』と告白をされているかのようだった。クラルテはいつだって俺のために頑張ってくれている。

 嬉しくて、照れくさくて――それから幸せだと心から思う。不安だなんて言っていられない。クラルテにもらった幸せを、今度は俺が返す番だ。


「そろそろ行こうか」

「はい! すっごく楽しみです!」


 嬉しそうに笑うクラルテに、俺は思わず目を細めた。



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