愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
***
朝食を食べたあと、俺たちは馬車で王都の中央へと向かった。
「わたくし馬車って大好きです! 転移魔法を勉強して以降、あまり乗らなくなったので、なんだかすごく新鮮ですし! 子供の頃はよく乗っていたんですけどね」
クラルテはウキウキと声を弾ませつつ、窓から景色を眺めている。
「……どうせ買うなら魔力車のほうがいいか迷ったんだが」
魔力車というのは文字どおり魔力で動く車のことだ。形は馬車と似ているが、原動力が馬じゃないため、コンパクトだしスピードも出る。ただし、その分だけ値段は高い。十数年前に開発され、一部の上流貴族のみに使用されていたのだが、最近では流通台数が増えてきている。クラルテは流行に敏感だし、どちらがいいか割と本気で悩んだのだが。
「いえいえ、馬車のほうがなんだか特別感があって嬉しいです。わたくしには転移魔法がありますし。ここなら旦那様と思う存分くっつけますし! 旦那様、密室に二人きりって、なんだかドキドキしません?」
「……クラルテならそう言うだろうと思った」
魔力車の場合は運転手がずっと同じ空間にいる。馬車なら完全に二人きりだ。
しかし、クラルテが好むと思った――というのは完全に言い訳で、俺がそちらを望んだ、というのが実は正しい。
朝食を食べたあと、俺たちは馬車で王都の中央へと向かった。
「わたくし馬車って大好きです! 転移魔法を勉強して以降、あまり乗らなくなったので、なんだかすごく新鮮ですし! 子供の頃はよく乗っていたんですけどね」
クラルテはウキウキと声を弾ませつつ、窓から景色を眺めている。
「……どうせ買うなら魔力車のほうがいいか迷ったんだが」
魔力車というのは文字どおり魔力で動く車のことだ。形は馬車と似ているが、原動力が馬じゃないため、コンパクトだしスピードも出る。ただし、その分だけ値段は高い。十数年前に開発され、一部の上流貴族のみに使用されていたのだが、最近では流通台数が増えてきている。クラルテは流行に敏感だし、どちらがいいか割と本気で悩んだのだが。
「いえいえ、馬車のほうがなんだか特別感があって嬉しいです。わたくしには転移魔法がありますし。ここなら旦那様と思う存分くっつけますし! 旦那様、密室に二人きりって、なんだかドキドキしません?」
「……クラルテならそう言うだろうと思った」
魔力車の場合は運転手がずっと同じ空間にいる。馬車なら完全に二人きりだ。
しかし、クラルテが好むと思った――というのは完全に言い訳で、俺がそちらを望んだ、というのが実は正しい。