愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「ああ、あるよ。今日はクラルテのドレスを選びに来たんだ」

「……わたくしの、ですか?」

「うん。今度、一緒に夜会に出席したいと思って」


 答えれば、クラルテはキョトンと目を丸くした。


「本当に!? わたくしと一緒に出席してくださるんですか?」

「ああ」

「でもでも、ハルト様は夜会が苦手だって調べがついているんですけれども! それなのにいいのですか? わたくしに合わせて無理していらっしゃいません?」


 上目遣いに俺を見つめつつ、クラルテが質問を重ねてくる。


「そうだな。たしかに俺は夜会が苦手だ。だけど、クラルテのドレスアップした姿は是が非でも見たい。……それに、君の友人やご家族にもご挨拶したいし」

「……え?」


 俺の言葉にクラルテはポッと頬を赤らめる。聡明な彼女のことだ。俺がどういう気持ちで――どういう目的で今日という日を迎えたのか、薄々気づきはじめていることだろう。


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