愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

22.それはありふれた言葉だけど

 新たに発生した爆発のため、俺たちはすぐに建物からの退避を余儀なくされた。
 建物の外側からの消火活動は、内部からのそれよりも効果はどうしたって落ちてしまう。けれど、隊員の安全を考慮すれば、ここまでが限界だった。

 おまけに、三階と四階のフロアを繋ぐ階段は炎で完全に塞がれていた。階段を通らずに四階に向かうためには、転移魔法を使うしかない。しかし、転移魔法の使い手は建物の外部にいる上、安全に転移できる場所があるかどうかもわからない。退避の前に、俺たちが様子をうかがうことはできなかった。


(クラルテは今、どこにいるんだ……?)


 他の魔術師たちとともに外から水魔法を放ちつつ、俺は必死で視線を彷徨わせる。行き交う救護担当の魔術師たちのなかに、クラルテの姿は見当たらない。火災現場付近の立ち入りは禁止されているものの、魔術師や避難者たちでごった返しており、姿を確認するのは困難だった。


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