愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
(ああ、やっぱり今日もこんな時間になってしまいました)


 旦那様のことを考えているときって、若干頭の中がバグっていると申しましょうか……時間とかお金とかすべきこととか、いろんなことがどうでもよくなるんですよね。だって、わたくしにとって唯一無二の揺るがぬ指標ですから。


(さてと)

 いつまでもこうしていては、二人揃って遅刻しちゃいます。
 旦那様を起こすため、わたくしは身を起こしました。いつものように胸を優しく揺すろうと思ったその瞬間、ぐいっと腕を引かれます。


「えっ……?」


 どうしてでしょう? ……わたくしは今、旦那様の上に乗っかっています。完全に体勢を崩してしまいました。

 次いで、背中にぬくもりを感じます。たくましくて思わず縋りつきなるような大好きな旦那様の腕です。


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