愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
 先日の火事――わたくしとハルト様が遭遇したあの火災は、放火事件と断定され、目下捜査が進められています。

 現場に居合わせた――というか、二度目の爆発の際に間近にいたわたくしは、あれこれと事情聴取を受けていて、中々に忙しい日々を過ごしています。……あの日のわたくしたちって非番だったんですけどね! まあ、公務員ですからそういうこともあります。


「そうか……大変だな」


 ハルト様はそう言って、労るようなまなざしでわたくしのことを見つめています。テーブルがもっと小さかったら、わたくしのことを撫でてくれていたに違いありません。……そんなふうに想像するだけで、わたくしの心と体はびっくりするぐらい安らぎます。どれだけささくれたっていても、一瞬でなおってしまいます。とても嬉しいし、幸せです。これが朝食の場じゃなかったら、わたくしはハルト様に抱きついていたでしょう!


「へっちゃらですよ! 書類仕事は嫌いじゃありませんし、ハルト様とお昼の時間も合わせやすいですし! 毎日職場でデートができるの、幸せだなぁって思います」


 ハルト様はただでさえ二日に一回しか家に帰ってきませんからね! 少しでも一緒にいることができて――なんなら同じ空間で同じ空気を吸えるってだけでわたくしは嬉しいです。


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