愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「なんだ、そんなことか」

「そんなことって……! わたくしにとってはめちゃくちゃおおごとでしたよ!」


 下手すれば婚約が流れるんじゃないかって。せっかくハッピーエンド目前だったのにって。婚約破棄されちゃったら、死んでも死にきれませんし!


「そんなこと、だよ。てっきり俺は、無意識のうちにクラルテに嫌われるようなことをしてしまったんじゃないかと……本気で心配していたんだ」


 ハルト様はそう言って、本当に嬉しそうに笑っています。わたくしは思わず唇を尖らせてしまいました。


「もう! ハルト様はまだまだわたくしという人間がわかっていらっしゃいませんねぇ。わたくしがハルト様を嫌うなんてありえません。絶対絶対ありえません! ついでに言うと、もしもハルト様に嫌われてしまったそのときには、もう一度好きになってもらえるまでつきまといますので、覚悟していてくださいっ」


 言いながら、わたくしはずいと身を乗り出します。
 これ、仮定じゃなくて決定事項ですから。もし万が一ハルト様に婚約を破棄されたとしても、わたくしは絶対に諦めません。悪いところがあったら全部なおしますし、全力で頑張ります。元々頑固で我の強いタイプですし、これだけは譲れません。


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