愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「ひとつ質問をいいか?」
「もちろん、なんなりと!」
「クラルテはどこで俺を知ったんだ?」
先程から必死で記憶を辿っているが、どうにも思い出せそうな気がしない。
そもそも俺は社交というものをほとんどしてこなかった。夜会に出席したのも片手で足りるほどの回数だし、実家関係の付き合いもそこそこ程度。こんな愛らしい(というか押しが強い)女性と出会っていたら、さすがに覚えている気がする。というか、覚えているに違いない。
「え〜〜? 内緒です!」
「内緒っ……!?」
思わぬ返事に俺は思わず愕然としてしまう。
隠す理由など見当たらないし、これだけ俺を慕ってくれているのだ。当然、嬉々として教えてもらえるものだと思っていたのに。
「だって、せっかくなら自力で思い出してほしいじゃありませんか? それが乙女心っていうものです」
「乙女心……それがわかっていたら、俺は既に未婚じゃなかっただろうが」
どこか楽しげなクラルテの返事に、ついつい恨みがましい言葉をつぶやいてしまう。彼女は一瞬きょとんと目を丸くし、それからふふっ、と小さく笑った。
「もちろん、なんなりと!」
「クラルテはどこで俺を知ったんだ?」
先程から必死で記憶を辿っているが、どうにも思い出せそうな気がしない。
そもそも俺は社交というものをほとんどしてこなかった。夜会に出席したのも片手で足りるほどの回数だし、実家関係の付き合いもそこそこ程度。こんな愛らしい(というか押しが強い)女性と出会っていたら、さすがに覚えている気がする。というか、覚えているに違いない。
「え〜〜? 内緒です!」
「内緒っ……!?」
思わぬ返事に俺は思わず愕然としてしまう。
隠す理由など見当たらないし、これだけ俺を慕ってくれているのだ。当然、嬉々として教えてもらえるものだと思っていたのに。
「だって、せっかくなら自力で思い出してほしいじゃありませんか? それが乙女心っていうものです」
「乙女心……それがわかっていたら、俺は既に未婚じゃなかっただろうが」
どこか楽しげなクラルテの返事に、ついつい恨みがましい言葉をつぶやいてしまう。彼女は一瞬きょとんと目を丸くし、それからふふっ、と小さく笑った。