愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「ビックリした……似合ってる。すごく可愛い。本当に、可愛い」


 つむじにすりすりと頬ずりをされ、頬には触れるだけの口づけを。……すっごく嬉しいけど、その分だけ恥ずかしいです! 逃げ出そうともがくのに、ハルト様が全然放してくださいません。全身が熱くて、心臓がドキドキして、なんともたまらない気分です。


「困ったな……誰にも見せたくない」

「ハルト様ったら」


 ハルト様はわたくしの肩口に顔を埋め、熱い吐息を吐き出します。あっ、これは割とマジなやつですね。ハルト様、冗談で言ってない。わたくしは彼をそっと抱き返しました。


「せっかくおめかししたんで、他の人にも見ていただきたいです! というか、わたくしはハルト様と夜会デートがしたい! みんなに『ハルト様はわたくしの婚約者なんですよ!』って自慢して回りたいので、連れて行っていただかないと困ります。ずっとずっとわたくしの夢だったんですから」

「夢?」


 キョトンと目を丸くして、ハルト様が尋ねてきます。大きくうなずいてから、わたくしはハルト様の頬に手を伸ばしました。


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