愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「クラルテが他の男と? まさか。そんなこと、俺が許すはずがない」


 ハルト様はわたくしを抱き寄せつつ、チラチラと周囲に視線を送りました。いわゆる牽制というもののようです。そういえば以前、夜会でそういうことをしたいっておっしゃってましたものね! なんだかむず痒い気持ちです。


「ホント、人間って変われば変わるもんだよね。以前のハルトは誘ってもなかなか夜会に来なかったし、婚約者をエスコートしている姿だって想像できなかったし、こんなふうに独占欲丸出しになるなんて……僕は夢にも思わなかったよ」


 プレヤさんはこらえきれず声を上げて笑いながら、ハルト様の肩をポンと叩きます。


「それじゃあ二人とも、またあとで。……あっ、そうだ。クラルテ、僕と一曲踊ってよ! ハルトのあとでいいからさ」


 と、プレヤさんがわたくしに手を差し出してきました。


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