愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「ダメです。クラルテが踊っていいのは俺だけですから」


 コンマ1秒。わたくしが返事をするまもなく断りを入れるハルト様の姿に、わたくしたちは思わず顔を見合わせます。


「……と、わたくしの婚約者様が申しておりますので」


 苦笑交じりの微笑み。プレヤさんはわたくしの返事にアハハと笑い転げました。


「仕方がない。独占欲強めな婚約者様に免じて、今夜のところは諦めるよ」

「……なに言ってるんですか。今夜だけじゃありませんよ。この先ずっと、クラルテが踊っていいのは俺だけです」


 ハルト様は至極真剣な顔つきで、そんなことを言い返します。


(ああ……本当に、わたくしの婚約者様はなんて可愛くて愛しいんでしょう!)


 ハルト様の腕を抱きしめながら、わたくしは満面の笑みを浮かべるのでした。
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