愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「さて、クラルテ。覚悟は決まったか?」


 ハルト様が尋ねてきます。彼の視線の先には二人の男性――ハルト様のお兄様がいます。本日の本丸です。わたくしにとってのラスボスです。

 正直なところ、胃はずっとキリキリしていますし、とっても不安でたまりません。ですが、ハルト様が『なにがあってもわたくしと離れない』と約束してくれましたからね! 怖くても逃げ出すわけには参りません。


「お願いいたします」


 ギュッとハルト様の腕を抱きしめ、わたくしは彼のあとに続きました。


「兄さん」


 会話の合間をぬってハルト様が声をかけます。お兄様方はすぐにこちらを向きました。


「こんばんは、ハルト。こうして会うのは久しぶりだね。手紙のやりとりはしていたけど」


 一番上のお兄様が言います。ヴァイラー様――次期伯爵様です。顔立ちはハルト様に似ていらっしゃいますが、体型がほっそりとしているので、受ける印象はかなり違います。


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