愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
(呆れられていない……?)


 いえいえ、油断は禁物です。安心したところでグサッと刺すのは狩の常套手段ですから! ……とはいえ、見るからに結婚を反対されたり、嫌われている様子はありません。わたくしはハルト様に導かれて、もう一度お二人の前に立ちます。


「……あの、改めましてこんばんは。あのときは大変失礼いたしました」


 心からの謝意を込めて、わたくしは頭を下げました。


「こんばんは、クラルテさん。もう一度君に会うことができて、俺たちはとても嬉しいよ」


 ヴァイラー様とエッシュ様がそう言って目を細めます。顔や体型は違えども、ハルト様の醸し出す温かな雰囲気とそっくりです。
 きっと――いえ! これは絶対! 怒っても呆れてもいらっしゃいません。本気でわたくしを歓迎してくださっています!


「あのときの約束がようやく果たせるね。こんなに可愛い義妹ができるなんて、嬉しいな」


 エッシュ様が差し出した手のひらを、ハルト様が払います。その瞬間、お兄様方ふたりは顔を見合わせ、声を上げて笑いました。


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