愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

29.ハルト様に消毒してもらわなきゃ......!

 挨拶が一段落したところで、わたくしたちは食事やダンスを楽しむことにしました。

 これまでの夜会のときはいつも『なんとかハルト様の目にとまりたい』と、彼の視線の先をうろちょろしていて、こんなふうに食事を楽しむ余裕はなかったので、なんだかとっても嬉しかったです。


 ダンスのほうは……ハルト様はちょっぴり苦手意識があるというか、あまり気乗りしないようでしたが『俺が踊らなかったら他の男が群がるから』という理由で踊ってくださいました!

 けれど、正直な気持ちを打ち明けますと、わたくしはハルト様のダンスがあんまり上手じゃなくて、ひどく安心してしまいました。
 だってだちぇ、それってつまり、わたくし以外の女性と踊り慣れていないってことでしょう? 経験豊富じゃないってことでしょう? 過去のアレコレを想像してしまうのって、とっても嫌じゃないですか。独占欲強いんですよ、わたくしって。


 踊り終わったタイミングで、プレヤさんが近づいてきました。ハルト様はムッとした表情で、わたくしのことを後ろに隠します。……もう一度ダンスに誘うつもりだと思っているみたいです。


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