愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「なによそれ……クラルテって、あなたがさっき連れて歩いていた地味女?」

「地味? クラルテが? ……君は美醜の基準が狂っているのではないか?」

「なんですって!」


 ロザリンデはそう言って、頬を真っ赤に染めあげる。


(まったく、なにを言っているのやら)


 クラルテは愛らしく、美しい。どこにいても目を惹く華がある。地味だなんてとんでもない。彼女の魅力がわからないなんて、目か頭がおかしいとしか思えないのだ。


「……その言葉、そっくりそのままお返しさせてもらうわ。まったく! ハルトって、あたしと婚約していたときには、夜会なんて来たがらなかったじゃない? 元々人付き合いは最悪だし、あたしに婚約破棄されて以降も全然こういう場に来てなかったし。見る目を養う機会に恵まれなかったのね……気の毒だわ」

「それで……一体なんのようだ?」


 早くクラルテのもとに戻りたいのに――苛立ちを隠せないままため息をつくと、ロザリンデはフンと鼻で笑った。


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