愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「知り合いを見かけたら声をかけるのは当たり前でしょう? しかも、あなたは一応あたしの元婚約者だし。おまけに、あたしのことが忘れられなくて未だに独身みたいだから、せめて会話ぐらいしてあげなきゃって思うじゃない?」

「必要ない。あいにく、もうすぐ俺は独身じゃなくなる」

「は?」


 俺の言葉に、ロザリンデは素っ頓狂な声を上げる。


「先程一緒にいた女性――クラルテと結婚するんだ。挨拶はこの辺で。クラルテが待っているから」


 これ以上彼女に用はない……横をすり抜けようとしたらロザリンデは「待ちなさいよ」と俺の腕を掴んできた。


「結婚? あなたが? 冗談でしょう? こんな融通の効かない堅物と結婚する女がいるっていうの?」


 どこか小馬鹿にした表情。婚約時代によく見た顔だ。


「変わらないな、おまえは」


 何度目かのため息をつきつつ、俺はロザリンデの手を振り払う。


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