愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「そんなこと、あるはずがないでしょう? ――金銭的な補償なんていらないわ。うちはお金になんてまったく困ってませんから!」

「あら、そうですか! それでは寛大なお言葉に甘えさせていただくことにします! ハルト様、行きましょう?」


 無事、自分の望みどおりの返事をロザリンデから引き出せたのだろう。クラルテはとても嬉しそうに笑っている。


「まっ、ちょっ!」


 対するロザリンデのほうは「いえいえ、それではわたくしの気が済みませんから」なんて言葉を想定していたのだろう。見るからにうろたえている。相手はあのクラルテなのに……俺はふぅと息をついた。


「あっ、そうだ。金輪際、ハルト様には近づかないでくださいね! ハルト様、わたくしのなんで! わたくしの大事な旦那様なので!」


 クラルテはそう言って、ロザリンデをキッとにらみつける。ロザリンデはまたもや頬を真っ赤に染めた。


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