愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「おはようございます、ハルト様」


 クラルテの声。ふと見れば、彼女は俺を見上げながら笑っていた。


(……可愛い)


 本当に。可愛くて、眩しくて、俺にはもったいないとわかっている。……けれど、絶対に手放すことはできない。


「おはよう、クラルテ」


 思い切り抱きしめて、頬に、額に口づける。クラルテは嬉しそうに笑いながら、俺のことを抱きしめ返した。


「これ……病みつきになっちゃいそうです」

「え?」


 ドキッとしつつ聞き返せば、クラルテはいたずらっぽく笑った。


「朝起きたらハルト様が隣にいるってめちゃくちゃ幸せですね。思い切り抱きしめてもらえて、撫でてもらえて、わたくしもうすぐ死んじゃうんじゃないかってぐらい。このぬくもりを知っちゃったら、離れるとか無理じゃないですか?」


 俺の胸にコテンと顔を預け、クラルテは俺を見上げてくる。小悪魔め……相変わらず俺を煽るのが恐ろしいほどに上手い――そんなことを思ったのは、クラルテを押し倒して、何度もキスをしたあとだった。感覚が完全にバグっている。恋というのは人をどこまでも愚かにするらしい。


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