愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

35. ......クラルテ、それは無理だよ

(クラルテがザマスコッチと手紙のやり取りをしている……?)


 心臓がドクンドクンと鳴り響く。動揺のあまり息が上手くできなかった。


(一体何故?)


 どうしてなのか……本当は考えなくともわかる。わざわざ手紙を職場まで転送をしているのだ。……俺から隠すために。そう考えざるを得ない。


(何故だ? どうしてなんだ、クラルテ?)


 胸が苦しい。クラルテの笑顔が頭に浮かび上がり、今にも泣き出しそうになる。
 クラルテが俺以外の名前を呼ぶのが嫌だ。笑顔を向けるのが嫌だ。……俺以外の男を好きになるなんて嫌だ。


(嫌だ)


 ……というより無理だ。耐えられない。
 クラルテだけはなにがあっても絶対に失うわけにはいかない。奪われるわけにはいかないんだ。


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