愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「ハルト様ったら、一体どうしちゃったんですか?」

「……なんでもない。多分、寂しかったんだと思う」


 クラルテが俺の頭を撫でる。優しく、愛しげに。これまでとちっとも変わらない様子で。


(きっと見間違いだったんだ)


 クラルテが俺を裏切るはずがない。俺をひとりにするはずがない。こんなことで不安になるなんてバカげている。……わかっている。わかってはいるんだ。


「大丈夫ですよ」


 クラルテは微笑み、俺の頬へと口づける。思いきり抱きしめられて、胸がじわりと温かくなる。


「もうちょっとしたら、もっといっぱいハルト様と一緒にいられるようになりますから。……というか、それだけをモチベーションに頑張っているのですから、そうなってもらわないと困ります! 誰かのために自分を犠牲にするなんて生き方は好きじゃありませんもの」


 プンプンと頬をふくらませるクラルテの姿に、俺は思わず目を細めた。


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