愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「――許せない」


 俺のクラルテに……! 俺のクラルテにあんなにも軽々しく触れるだなんて……! 万死に値する。

 今すぐあの男を止めなければ――そう思ったその時、背後から思いきり口を押さえつけられた。


「もう……やっぱりこうなった。だから僕は反対だったんだよね」


 心底呆れたような声音。プレヤさんだ。


「な、にを……」

「ここまで来て台無しにされたらたまらないからさ……悪く思うなよ、ハルト」


 プレヤさんはそう言って、俺の手足を魔法で縛る。あまりにも思いがけないことに、俺は言葉を失った。


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