愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
(心頭滅却すれば火もまた涼し……大丈夫、俺の仕事は火を消すことだ)


 柄にもなく、ちょっと熱くなってしまったようだ。だが
、燃え盛る炎だって俺ならたやすく消すことができる。これまでずっとそうやって生きてきた。大事なのは平常心だ、平常心。


「あのぅ、旦那様……このあと、どうします?」

「んんっ!?」


 けれど、上目遣いにそんなことを尋ねられ、俺は思わずむせてしまった。


(このあと……このあと?) 


 夕食は既に食べ終わろうとしている。
 時刻は夜。他にすることといえば……いえば、なんだ?


「……片付けなら俺がする。クラルテはゆっくり休むといい」


 正直『どうする?』と尋ねられるような内容ではない気がするが、他に思いつかないので仕方がない。俺は自分の皿をまとめはじめた。


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