愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「ハルト様、好きです! 大好き!」


 本当に。好きすぎて怖いぐらい。

 こんなふうに愛を叫ぶのはもう何度目のことでしょう? 
 だけど、何度口にしても想いは色褪せないどころか、日に日に大きくなっていくわけで。これから先の人生、何百回、何千回と口にしていきたい所存なのです。だって、自分の中に留めておいたら爆発しちゃいそうなんですもの。

 それに、ハルト様はわたくしがどれだけ好きって伝えても、きちんと受け止めてくれますしね!


「……本当に、クラルテには敵わない。多分俺は、一生負け続けるんだろうな」

「ええ? 本当ですか? わたくしのほうこそ、いっつもハルト様に負けてばかりで悔しいなって思ってましたのに!」


 実際のところ、わたくしが勝っていたのは最初のほうだけ。以降はハルト様に押されっぱなしです。

 毎朝毎晩、彼の優しさに、甘い言葉に翻弄されて、どんどん『好き』が育っていく。それがあまりにも嬉しくて、幸せで。『あーー、今日も負けてしまったな』なんて笑いながら眠りにつく。そんな現在が、未来があるなんて、はじめてこの家に来たときのわたくしは想像も出来ませんでしたから。


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