愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「いや、俺の負けだよ。こんなに夢中に……好きにさせられて、自分じゃもうどうしようもない。……本当にどうしてくれるんだ?」


 ハルト様はそう言っていたずらっぽく笑います。
 ああ、ほら。やっぱり負けてるのはわたくしのほう。けれど、こんなふうに言っていただけるのがあまりにも嬉しいから。……今日だけは勝ちを譲ってもらおうかな。


「ではでは、責任をとって、ハルト様を一生幸せにさせていただきますね!」


 高らかにそう宣言をすれば、ハルト様はほんのりと目を見開き破顔しました。


「ハハッ……クラルテはカッコいいな」


 それは一方的にはじまったはずのわたくしの恋。
 押して、押して、押しまくって、いつか成就したらいいなぁなんて夢を見ていたわたくしの恋が、今こうして叶おうとしています。

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