愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「とりあえず、中に入れていただけませんか? 色々とお話したいこともございますし、早く片付けなければ日が暮れてしまいます! お夕食の準備もしなければなりませんし、他にも色々……」


 クラルテが上機嫌な様子でまくしたてるが、俺はまったくついていけていない。


(ダメだ。このままこの子を家に入れるわけにはいかない)


 確かに、彼女との婚約話については上司や家族から聞き及んでいる。けれど、こんな急展開を迎えるとは思っていなかった。ゆっくりと状況を整えて、丁重にお断りするつもりでいたというのに。


「クラルテ……俺は、その……大変言いづらいのだが」

「わたくしとの結婚に納得していない、断るつもりだった、ですね? 大丈夫です、存じ上げています!」


 クラルテはそう言って、ビシッと敬礼のポーズをとる。


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