愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「そんなことはありませんよ! 旦那様の上司であるプレヤさんとは昔からの知り合いですし、旦那様のことを色々と教えていただきました。曰く、大層な頑固者だそうで」

「あの人はまた……」


 脳裏にのほほんと微笑むプレヤさんの表情が浮かんできて、眉間に自然とシワが寄る。というか、クラルテとプレヤさんが一緒にいる光景を想像すると、無性に胸がムカムカする。二人ともほんわかしているようで計算高いし、ものすごく仲が良さそうだ。普通に妬けるのだが……?


「旦那様! わたくしもかなりの頑固者ですから、旦那様とお揃いですね!」

「お揃い……いや、クラルテの場合は頑固というか、思い込みが激しいというか……」


 返事をしつつ、なぜか口元がにやける。


(なんだこれ……なにを笑っているんだ、俺? 実は満更でもないってことなのか?)


 お揃いと言われただけなのに……しかも『頑固者』って。あまりいい意味で使われる言葉じゃないはずなのに。嬉しいとか思っている自分に気づいて呆れてしまう。


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