愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
(心配だな……)


 あれだけおしゃべりなクラルテだ。俺がいないと寂しがるんじゃないだろうか? 昨日は一日べったりだったし。

 ……いやいや、冷静になって考えろ。よく考えるとあの子は転移魔法の使い手だ。寂しければ実家に帰ることも可能だろう。それに、友人や知人も多そうだ。


 でもなぁ……。相手はあのクラルテだもんなぁ。
 今朝俺を送り出すときもクラルテはなかなかに熱烈だった。魔術師団までついていくと主張をしていたし(全力で止めた)、転移魔法で俺を送ると言い張っていた(これも体を鍛えるためと言って止めた)。

 それに、妙に頑固なところのあるクラルテだ。『妻の務めは家を守ること』とかなんとか言って、ひとりでじっと家に籠もっているような気もしないでもない。いや、クラルテとはまだ正式に婚約を結んだわけでもないのだが。


(さて、どうしたものか……)

「なんだか浮かない表情だね」


 ポンと後ろから肩を叩かれる。プレヤさんだ。


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