愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「浮かない、というわけではありません」


 ただ心配していただけだ。とんでもなく強烈な押しかけ令嬢のことを。


「寮を出ての生活はどうだ? 案外いいものだろう? さっき別れたばかりなのにもう会いたくなっちゃう程度には」

「さっき別れたばかりって……なるほど、クラルテに俺の引っ越しについての情報を売ったのはプレヤさんですね?」


 先程から妙にニヤニヤしているし、含みのある物言いをしているなぁと思っていたが、どうやら俺の反応を探りたかったらしい。本当になんともいい性格をしていらっしゃる。


「え〜〜? クラルテ? なんのことだかわからないなぁ」


 プレヤさんはそう言って、機嫌が良さげに笑っている。俺は思わず彼の肩を小突いた。


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