愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「いい子だろう? 今どき珍しく擦れていないというか、令嬢らしくなくて」

「たしかに令嬢らしくはないですが、その分強烈すぎやしませんか? それに、令嬢らしくないって褒め言葉なんですかね?」

「褒め言葉だろう? 逞しいのはいいことだ。あの子ならどこででも生きていけそうだし」

「……わかったようなことを」


 俺のほうがクラルテを知っているはずなのに――思わずムッとした俺を見て、プレヤさんがゲラゲラ笑う。


「なんだよ、もう嫉妬か?」

「なっ……違いますよ」


 なんて、必死に否定してみたものの、頬がカッと熱くなった。


「うんうん、いい傾向だ。お前は融通が効かなさすぎるし、人間としての遊びの部分が絶望的に足りなかったからな。そのままクラルテにパクっと食べられてしまえ」

「またあなたは……他人事だと思って…………」

「ん? 他人事じゃなくしたほうがいいか? 俺もあの子となら結婚してもいいと思ってるぞ?」

「――は?」


< 39 / 266 >

この作品をシェア

pagetop