愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「――なあ、ハルト。前言撤回するなら早いほうが楽だぞ? あとになればなるほど、人間は意固地になるものだ。頑固もののお前ならなおさら。大体、元婚約者に操を捧げるなんてバカげている。そんな誓いを知っているのは俺やお前の両親ぐらいのもんだ。お前がクラルテと婚約したところで、周囲は普通に祝福する。話が違うだなんて文句を言うような人間はひとりもいないよ」


 困ったような、呆れたような表情を浮かべ、プレヤさんは俺の肩をポンと叩く。


「……そういうものでしょうか?」

「そういうものだよ。言っておくが、これは仕事でも同じだぞ? 間違えた、やり直したい、違う方法のほうが最善だと判断したらすぐに切り返す――それができる人間は強い。お前がこれまで指揮官になれなかったのは、そういう柔軟性が足りなかったからだ。最初に選んだ道が一番とは限らない。常に先を見据えてそのときどきで選択を重ねていく。でなければ隊員を守れない。……そうは思わないか?」


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