愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「積んできたわけです、って……一体いつからこんなことを?」


 そういえば、転移魔法が得意だと教えてくれたとき『必要にかられて練習した』なんてことを言っていたっけ……。


「かれこれ七年前のことです! つまり、旦那様に出会ってすぐの頃から、わたくしはこうすることを決めていたわけですねぇ!」


 クラルテは自慢げに微笑みながら、俺の顔をまっすぐに見つめた。


(まずい……)


 これはまずい。思わず視線をそらした瞬間、顔が燃えるように熱くなった。


(さすがに一途がすぎるだろう……)


 たった一度会っただけの男のために、どうしてそこまでできる? 思い込める? 俺がとんでもない性格の男だったらどうする気だったんだ? というか、出会った頃には俺にはロザリンデという婚約者がいたわけで。それなのにクラルテは……。


< 50 / 266 >

この作品をシェア

pagetop