愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「前から思っていたんだが、俺のなにがそんなにいいんだ?」
「え? 全部ですけど」
至極サラリと、まったく照れることなく言ってのけるクラルテに、聞いているこちらのほうが恥ずかしくなる。
(いや、予想はしていた。予想はしていたが!)
本当に『全部』だなんて言われるとは思わないだろう? しかも、冗談じゃなくて本気で言っているからたちが悪い。俺は思わず首を横に振った。
「いやいや、クラルテが俺に直接会ったのは七年前が最初で最後なんだろう?」
「ふふふ、甘いですねぇ旦那様。わたくしがそれだけで満足するような女に見えます?」
「なっ……!」
なんとも思わせぶりな言葉とともに蠱惑的な表情で見つめられては堪らない。俺は完全に言葉を失ってしまった。
「…………見えない」
「でしょう? わたくしはプレヤさんから情報をいただくとともに、定期的に旦那様を拝見していたんです。年始の出初式とか、上官命令で出席を余儀なくされた夜会とか! 他にも色々な場面で旦那様のことを拝見していたんですよ!」
懐かしそうに目を細めるクラルテの姿に、俺は小さく息を呑む。本当にこの子は七年もの間、一途に俺を思い続けてくれたんだろう――そう思い知るには十分で。
「え? 全部ですけど」
至極サラリと、まったく照れることなく言ってのけるクラルテに、聞いているこちらのほうが恥ずかしくなる。
(いや、予想はしていた。予想はしていたが!)
本当に『全部』だなんて言われるとは思わないだろう? しかも、冗談じゃなくて本気で言っているからたちが悪い。俺は思わず首を横に振った。
「いやいや、クラルテが俺に直接会ったのは七年前が最初で最後なんだろう?」
「ふふふ、甘いですねぇ旦那様。わたくしがそれだけで満足するような女に見えます?」
「なっ……!」
なんとも思わせぶりな言葉とともに蠱惑的な表情で見つめられては堪らない。俺は完全に言葉を失ってしまった。
「…………見えない」
「でしょう? わたくしはプレヤさんから情報をいただくとともに、定期的に旦那様を拝見していたんです。年始の出初式とか、上官命令で出席を余儀なくされた夜会とか! 他にも色々な場面で旦那様のことを拝見していたんですよ!」
懐かしそうに目を細めるクラルテの姿に、俺は小さく息を呑む。本当にこの子は七年もの間、一途に俺を思い続けてくれたんだろう――そう思い知るには十分で。