愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「クラルテの気持はよくわかるよ」

「へ?」


 本当に? わかるんですか? わかっちゃうんですか? 
 それってつまり、わたくしが旦那様が大好きすぎて、いつでもどこでもアタックしたくて、ついでに誰にも見せたくないという独占欲まで絡んじゃうんですけど、そこのところまでわかっていらっしゃるのでしょうか?


「俺だってクラルテと二人きりの生活は捨てがたい。すごく居心地がよくて、温かなひとときだった」


 これは……! 脈アリってことでよいでしょうか? さすがに期待してもいいですよね!? というか、こんな思わせぶりなことを言っておいて『勘違いです』はひどい気もしますけど(相手が旦那様ならそれもアリですが)。


「けれど、クラルテは家のことだけでなく、仕事のほうも立派すぎるほど頑張ってくれている。これ以上負担はかけられない」

「旦那様……」


 嬉しい。旦那様にこんなふうに言っていただける日が来るなんて――七年前の自分に教えてあげたいぐらい。
 じわりと込み上げてきた涙を拭いつつ、わたくしは旦那様に向かって微笑みました。


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