愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「わたくしが頑張っているのは、全部旦那様のためです。旦那様にわたくしを見ていただきたくて……認めていただきたくて、それで頑張っているんです」

「ああ、伝わっている。クラルテは十分、よくやっているよ。昨日だってはじめての出動だというのに、慌てることなく転移魔法を使えていた。おかげで俺たちはすぐに現場に向かうことができた。心から感謝している」


 旦那様はそう言ってわたくしのことをまっすぐに見つめます。


(伝わっている……)


 わたくしの想いが、旦那様に。人からすれば『たったそれだけ』のことかもしれないけど、わたくしにとっては最上級の褒め言葉で。本当に嬉しく思いました。


「そういうわけだから、家ではのんびり過ごしてほしい――いいな?」

「はい……お言葉に甘えさせていただきます」


 元々は『旦那様のためになにかをしている』という実感がほしかっただけですし、きちんとわたくしの想いが伝わっているとわかったわけですから。反対する理由はございません。


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