愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
 魔法はあれば便利なものです。しかし、ないと生活ができないというわけではありません。すべての事柄を魔法に頼っていては、わたくしはすぐにヨボヨボのおばあさんになってしまうでしょう。

 それに、魔力というのは無尽蔵に湧いてくるわけではありません。使えば減りますし、回復にかかる時間は、その日の体力等に左右されます。
 おまけに、人によって容量が異なるうえ、スカスカになると術が発動しなくなってしまいます。体力とは違って、魔力が完全になくなると命に関わることもあるらしく。
 ですから、己の魔力が枯渇しないよう、魔術師たちは自己管理を行わなければならないのです。


「そうは言うが、クラルテの魔力量は相当なものだと聞くぞ?」

「まあ……! わたくしの噂を気にかけてくださっているのですか? 嬉しいです! わたくし、こういう性格……というか、性質をしておりますでしょう? ですから、人よりも魔力の受け皿が大きいと申しましょうか……使ったそばからメキメキと魔力が湧いてくるのですよ!」


 せっかくのプレゼンの機会を逃すまい――わたくしは旦那様に向かって自分というものを売り込みます。


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