愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「たとえ政略結婚でも! 裏切られたとしても! 俺は彼女を裏切らない。一生操を立てるべきだと思っています」


 この件について己の見解を説明するのはもう何度目だろうか……しかし、未だに誰からも理解してもらえたことがない。曰く『俺は頭が固すぎる』んだそうだ。自覚はある。が、己を変えるつもりはない。


「ホント、ハルトって今時珍しいタイプの頑固者だよねぇ。損だよ、そういう考え方。もっと柔軟に生きていかなくちゃ」

「プレヤさんみたいにですか?」

「そうそう。女の子っていいよ? 一緒にいると癒されるし楽しいし」

「――自分は独身のまま遊び回っているくせに」


 柔軟といえば聞こえはいいが、要はいつまでもフラフラしている遊び人だ。過去には結婚の話も出ていたらしいが、本人がこんな感じだからとたち消えになっている。上官としては尊敬できても、男としては尊敬しづらい――それが俺のプレヤさんに対する印象だ。


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