愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
 もちろん、わたくしの仕事はこれだけではありません。


 ひとたび火災が起きれば、先輩方と一緒に転移魔法で魔術師たち(旦那様たち水魔法部隊)を現場に送り届けます。

 事前にボヤだとわかっている場合は、わたくしたち転移魔法の使い手は師団に残ることが多いです。水魔法部隊の中にも転移魔法の使い手はいますし、他にも火災が発生する可能性がありますからね。

 ですが、大きな火災や建物の中に住人が残されている場合等については、一緒に現場についていきます。転移魔法を使って建物の中に魔術師を送り込むためです。入口付近が燃えていても、内部にはそこまで火が燃え広がっていない、ということがあるため、安全な場所を見つけ出してそこに転移をするのですね。

 だけど、安全な方法を見つけ出す――というのは当然、簡単なことじゃありません。

 わたくしたちは転移元と転移先に魔法陣を張るのですが、家の図面なんて所持してませんし、感覚でもって転移先の状況を探るしかないのです。
 他にも魔術師の感覚を魔導具とをリンクさせた『目』を送り込む、という方法があるのですが、こちらはリスクが高いため、あまり採用されません。魔道具が壊れれば術者がダメージを受けてしまうからです。
 そういうわけで、結局はコツコツと経験と技術と勘を磨いていくのが一番なのです。


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