愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「まあまあ、僕のことはさておき。この結婚、命令元は僕じゃなくてもっと上なんだ。本当に断れない話なんだよ。実はこの春、君を小隊長に昇進させるって話が出ているんだ」
「……!」
思わぬことに俺は一瞬目を瞠る。
(昇進……素直に喜んでいいものだろうか)
しばし首を傾げつつ「そうですか」とこたえることにした。
「それでさ、上官ってのは君と同じで頭の固い古い考え方の人が多いわけ。昇進の条件に結婚を、って言われていて。この結婚を飲まないなら魔術師団を抜けろ、なんて話まで出ていて」
「――自分は独身のまま昇進したくせに」
「そういうわけだから! 君の結婚はもう決定。どうせ寮も出ないといけない年齢なんだし、ここらで所帯を持ちなさいって」
他人事だと思って――プレヤさんはおどけた様子で両手をパッと開いた。
「昇進のために結婚が必要……わからないな。より責任が増し、仕事が忙しくなるこのタイミングでどうして?」
そもそも、俺がロザリンデに婚約を破棄されたのは、俺が仕事にばかりかまけていたからだ。禄に会いにも行かず、デートや夜会に連れ出すこともしなかったから愛想が尽きたのだという。
おまけに俺は伯爵家の三男で爵位を継ぐ予定もなく、結婚するメリットが大してない。金持ちの子爵令息に流れるのは当然だとは思う。そんな俺に結婚なんて……。
「……!」
思わぬことに俺は一瞬目を瞠る。
(昇進……素直に喜んでいいものだろうか)
しばし首を傾げつつ「そうですか」とこたえることにした。
「それでさ、上官ってのは君と同じで頭の固い古い考え方の人が多いわけ。昇進の条件に結婚を、って言われていて。この結婚を飲まないなら魔術師団を抜けろ、なんて話まで出ていて」
「――自分は独身のまま昇進したくせに」
「そういうわけだから! 君の結婚はもう決定。どうせ寮も出ないといけない年齢なんだし、ここらで所帯を持ちなさいって」
他人事だと思って――プレヤさんはおどけた様子で両手をパッと開いた。
「昇進のために結婚が必要……わからないな。より責任が増し、仕事が忙しくなるこのタイミングでどうして?」
そもそも、俺がロザリンデに婚約を破棄されたのは、俺が仕事にばかりかまけていたからだ。禄に会いにも行かず、デートや夜会に連れ出すこともしなかったから愛想が尽きたのだという。
おまけに俺は伯爵家の三男で爵位を継ぐ予定もなく、結婚するメリットが大してない。金持ちの子爵令息に流れるのは当然だとは思う。そんな俺に結婚なんて……。