愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
(僕からすれば、身近な女には手を出すなって感じだけど)


 遊ぶなら後腐れのない形で。職場の女には手を出さないっていうのは鉄則だろう。まあ、本気ならばこの限りではないけど、今のところは面白半分に近づいているというところだろう。


「――知ってますよ。知っているからこそ、どうしたらいいのか悩んでいるんでしょう?」

「え? 知ってたの? 本当に?」


 意外だ。本気で意外だ。

 ハルトといえば、仕事以外のことに微塵も興味を示さない朴念仁で、みんなで噂話をしていても見向きもしないし、美しい女性を見かけても眉すら動かさないし、わかりやすく誘惑されているのに気づくこともない。本当に面白みのない男だと思っていたんだけど。


(もしかして、自分で調べたのかな?)


 だとしたら、僕としてはものすごく面白い。

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