愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
 多分、クラルテは自分からハルトに他の男にアプローチをかけられていることを打ち明けないだろう。……いや、ヤキモチを焼かせる目的でそういう戦法をとる可能性もあるけど、今はまだ時期じゃないと判断するはずだ。下手すればハルトは他の男を勧めてきたり、彼女を突き放そうとするかもしれないと、そう思って。


(なんだよ、めちゃくちゃ惚れてんじゃん)


 たとえ気持ちが伴わずとも婚約に持ち込めれば御の字ぐらいのつもりでいたのに……これならクラルテの目指している恋愛結婚も夢じゃない。思わず口元が緩んだ。


「――婚約したら、他の男が寄ってこなくなりますか?」


 デカい図体を縮こまらせて、ハルトが俺に尋ねてくる。どうやら本気で悩んでいるようだ。


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