愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!
「うーーん……それはどうかな? ついさっき僕も婚約を勧めたし、効果は当然あるけど、だからといって男が寄ってこなくなるというものではない」


 普通、婚約者がいる女の子は恋愛(火遊び)対象から外す。だけど、クラルテの場合はそれだけでは足りなさそうだ。それだけ魅力的な子だし、なかには浮気や不倫といった背徳感を愛する男もいるからなぁ。


「だったらどうしたら……」

「牽制するのが一番だろう?」


 ビシッと指を指したら、ハルトはパチパチと瞳をしばたかせた。


「牽制、ですか」

「そう! 『クラルテは俺のものだ。誰にも渡さない』という強い想いを、客観的に見える形で示していく。そうすればほとんどの男はクラルテに近づかなくなるだろう。ただでさえおまえは厳しいことで有名だし、恐れられてもいるし、普段とのギャップも相まって効果てきめんだろう」


 効果てきめん……というか、単純に僕がそんなハルトを見て見たいだけだけど! 
 だってさ、あんなに恋愛を拒否していたのに! 絶対に誰とも結婚しないって言い張っていたくせに! 女の子に翻弄されているだなんて、面白すぎるじゃないか。


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