【お手紙お返事ぺーパー】8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました。小話
「アイラ、よく見つけたわね」
「みんながおしえてくれるの。かくれんぼだからいわないで……っていったんだけど。じっとみているからすぐわかっちゃう」
アイラが指さしたところには人などいない。少なくとも、フィオナにはなにも見えない。
きっとこれは、人ならざるものが見えるというアイラの能力によるものだろう。幽霊たちが教えてくれるというわけだ。
「……確かに、これじゃあ、つまらないかもね」
「わっ」
途中まで上手に下りていたオリバーが、足を滑らせる。
「危ないわ!」
慌てて手を伸ばしたフィオナが受け止める前に、銀色の聖獣がふわりと下りてきて背中にオリバーを乗せた。
「……ドルフ」
『俺がいて、こいつに怪我をさせるわけがなかろう』
ドルフは自慢げだが、オリバーがひとりで登れるわけもないのだ。ドルフが手助けしたに決まっている。
「危険なことは止めてって言っているでしょう?」
『どう止めたって登ろうとするのだから、乗せて見張った方が安全だろうが』
ああ言えばこう言う。ドルフの言うことももっともだが、フィオナは、最初から登らないように諭して欲しいのだ。
「オリバー、大人がいないときに木登りは駄目よ」
「ドル、いるよ?」
きょとんと見上げられて、フィオナも困ってしまうが、ここは毅然と言わなくてはならない。
「いつもドルフがいるわけじゃないのよ。誰も見ていないときにあなたが怪我でもしたら……」
「かーさま。とーさまがいた」
「え?」
叱られる空気を悟ってか、オリバーが話を変える。