イケメン御曹司に求婚されてます!?〜前世の恋人は今世では私を離さない〜
【前世】
〇森の中(夜)

生い茂る木々をかき分けながら、2人の男女が
追手から逃げている。

煌びやかなドレスを身にまとったこの国の姫・アーラの手を引きながら走る、姫の専属騎士の男・エトワール。

エトワールの服は少し破け、アーラのドレスも、裾が汚れてしまっている。

走る度、アーラの整えられた金色の長い髪(少しくせっ毛)とエトワールの黒髪(直毛)がゆれる。

追手1「どこだ!」

追手2「早く捕まえろ!男の方は殺しても構わん!!」

馬に乗って追ってくる兵士たちが、すぐ近くまで迫ってきていた。

エトワール「まずい、、」

エトワールは息の切れ始めたアーラを庇うようにして木陰に隠れる。

エトワール「このままじゃ俺もアーラも殺される、、。俺が追手を引き寄せるからアーラは逃げるんだ」

アーラ「だめよ!それじゃ駆け落ちした意味がないわ。2人で逃げないと、、、」

不安そうに、エトワールにしがみつくアーラ。
月の光が2人を照らしている。

エトワール「大丈夫。追手を撒いたら必ず君を探し出すから」

アーラ「そんなの絶対だめ!!貴方と離れたくないわ!!」

思わず大声で叫ぶアーラ。
アーラとエトワールのいる方を追手のランタンが照らす。

追手1「おい!声が聞こえたぞ!近くにいる!」

馬の駆ける音が、さっきよりも確実に大きくなっている。

追手2「見つけた!!いたぞ!!!」

走って逃げるも虚しく、見つかってしまう2人。

追手3「姫を離せ!!」

追手1「ソウル・アロー(魂の矢)」

呪文を唱えながら追手がエトワールに向けて弓を放つ。

アーラ「エトワール!!!」

エトワールを庇うようにして、彼の前に飛び出すアーラ。

音を立てて矢が彼女に刺さる。ゆっくりと倒れるアーラ。

エトワール「アー、、ラ、、?」

目の前の状況が理解出来ず、崩れ落ちるアーラを
ただ見つめるエトワール。

兵士たちも呆気にとられたように姫を見る。

追手4「おい!アーラ姫まで殺す必要はなかっただろ!」

追手1「て、手元が狂って、、、!!」

追手3「まあ駆け落ちをしようとした者など姫でもなんでもなかろう。どっちにしろ国に連れ戻されたあとは殺されるか地下牢行きなのだから」

追手4「だからと言って、、、!」

ざわざわと話し出す兵士。

その横で、ぐったりとしたアーラに繰り返し呪文を唱えるエトワール。

エトワール「サナ・ティビ・プレティオーサ(治癒)」

エトワールに兵士の会話など聞こえていなかった。

エトワール「アーラ、アーラ、今治すから!」

しかし、致命傷を負ってしまったアーラには、治癒の魔法は効かなかった。

追手5「シャープ・ソード(鋭い剣)」

姫を弓で射止めたことでざわついている中、追手の1人がエトワールに剣を向ける。

追手5「貴方たちの小さな愛の物語もこれで終わりですよ」

彼は、アーラを救うのに必死で追手のことを気にも解けないエトワールを容赦なく、魔法で形取られた剣で突き刺した。

薄れゆく意識の中、エトワールはアーラの手を握りしめ、最後の力を振り絞って呪文を囁いた。

エトワール「、、レナトゥス、、、(生まれ変わる)」

何にも邪魔されずに、誰からも干渉されずに愛し合えることを来世に期待して_。
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