運命
和也と付き合いだして半年が経とうとしているけれど、私は和也に身体をゆるしていなかった。
これも和也の心を惹きつけるためだった。それが裏目に出ることになる。
ある日、講義の終わった後に鈴菜に言われた。
「ねえ、彩美。和也と今、付き合ってるんだよね? 上手くいってるの?」
え?
何を問われているのか理解できなかった。私と和也は今は順調そのものだと思っていたからだ。
鈴菜は本当に心配しているようだった。
「じゅ、順調だけど?」
「ほんとに? 言いにくいけど、なんか、やれるだけの女、探してるって聞いたよ? 私の彼から」
頭から水を浴びせられたような衝撃。
和也がそんなことを?
「和也って優しいしいい男だけど、浮気症だよね。気をつけなよ?」
鈴菜は私の肩をぽんと叩いて講義室を出ていった。
一人残された私は。
気をつけていたのに。
それでもダメなの? 何が足りなかったの? どうすれば良かったの?
和也。あなたはなんて最低なの?
頭では分かっている。それなのに、和也以外はちっとも魅力的に見えない私がいる。
なぜ和也なの?
血の付いたナイフを持って呆然としている自分の姿がフラッシュバックする。
手が小刻みに震えていた。私は自分の手を押さえつけた。
別れるべきだ、ともう一人の私が言った。
もう十分。和也は人でなしだと。また同じ結末になる、と。
でも、もう一人の私は言うのだ。
大丈夫。まだ分からない。まだ、分からない。と。