運命
「あれ? もう帰ってたの?」

 和也の声が聞こえた。ろれつがやや回ってなかった。

「和也! 遅かったわね。飲んでたの? だいぶん酔っているみたいだけど……」
「……ああ。彩美は早かったね? 楽しかった?」
「うん、まあ」

 帰ってきた和也にホッとして、私は和也の背広を脱ぐのを手伝った。酒とタバコのにおい。それと。

 あれ? これは何のにおいだっけ? 初めて嗅ぐにおいではない気がする。

「彩美」

 和也が振り返った。その目が赤かった。そんなに飲んだのだろうか。
「何?」
「あのさ、話したいことがある」
 ろれつは回っていないのに、その声は真剣だった。
「な、何? 改まって」
 私は嫌な汗が背中を伝うのを感じた。
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