運命
 私は和也以外の男友達とも仲良くし続け、和也の嫉妬心を煽ったり、和也に誘われても何度かに一度はわざと断ったりした。

 和也を縛らないようにも気をつけた。嫉妬をしても表に出さない。彼の行動に探りを入れない。和也は私が和也にあまり関心がないと感じているようだった。

「彩美って、俺のこと好きなんだよね?」

 和也からの確認が増えるのは初めてのケースだ。
「好きは好きよ。でも、私、和也だけが全てじゃないもの。私には私のやりたいことがあるし」
 私はこの日ものらりくらりと和也の問いをかわした。全く嘘だった。内心は全身の感覚が和也のほうを向いている。
「面白くないな」
 和也のこんな顔は初めて見る。とても気分が良かった。
「あら、和也にだってしたいことはあるでしょう?」
「それはどうやったら彩美が俺のことばかり考えるようになるかってこと」
「本当はそんなこと思ってもいないくせに」

 私と和也は探り合いながら付き合うという、ある意味スリリングな恋愛にのめり込んだ。
 そういう意味で、今回は順調に思われた。
< 9 / 32 >

この作品をシェア

pagetop