【短編】メルティングギフト
直箸は不衛生なので、ミニトマトに刺さっていたつまようじを使うことに。



「はい、どうぞ」



したのだけど、先回りされてしまった。


目の前に差し出されている瑞々しい果実。

これはもしかして、あーんってやつ⁉ わわわ、すごくカップルっぽい!

嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいな。


でも……。



「じゃあ、いただきます」



人目もないし、断る理由もなかったのでお言葉に甘えた。


果汁たっぷり。噛めば噛むほど溢れてくる。

こんなに甘くて美味しいのに、廃棄に回されてたなんて信じられない。



「とろけてますね」

「だって美味しいんだもん。ほっぺた落ちまくってるよ〜」

「ふはっ、じゃあもっと落としてあげますね」

「いいの? わーい、ありがとう!」



すっかり梨のとりこになった私は、作戦も忘れて彼の手から2つ3つとおかわり。

過去最高に甘い昼休みを過ごしたのだった。
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